資金調達ガイド

社長必見!銀行の融資審査を通すためのたった1つのコツ

銀行からの融資がおりるかどうかは社長さんにとって大変関心が高いことでしょう。

銀行では、融資の審査の99%が「決算書」だけで決めています。
実際のところ、銀行の担当者は5分ほど決算書を見て、融資できそうかどうかを判断しています。

正直、決算書と言われてもどう見たらいいのかわからないですよね。

しかし、銀行の融資審査のポイントだけに絞ると、決算書は、銀行員でなくても5分で融資の見極めができるようになります。

銀行融資を受けるためには、決算書は避けては通れません。
決算書について、融資のポイントを理解し、対策をしていくことが、銀行から融資をひっぱるための一番の近道です。

今回は、決算書の融資の可否の8つのポイントから今すぐ使えるテクニックまでを、100社以上のクライアントに対して銀行融資のサポートをしてきた経験を元に、具体的に説明をさせていただきます。

目次

1.銀行融資の審査基準とは?

銀行融資の審査の基準には、大きく2つあります。

①返済が可能な財務状況であるか
②返済が滞った場合に回収できるのか

①については、借りたお金を返済する能力があるのか?という観点から、決算書の数字で判断することになります。

②については、万が一の場合、担保、保証能力があるのか?という観点から、担保や保証人で判断することになります。

昔は不動産担保さえあれば銀行融資が通るという時代がありました。
現在は、担保や保証人などは、あくまで決算書の補完であって、まずは会社の実績から判断され、決算書の内容が悪い場合には、そもそも審査の土台に乗りません。

融資を通すためには、決算書について経営者として最低おさえておきたいポイントが8つあります。
この8つの項目について、ひとつずつお伝えしていきます。

2.ポイント① 実態にあわせて、決算書を修正する

銀行は、会社から提出された決算書の中身をそのままで受け入れてはいません。

利益が出ていたとしても、粉飾しての黒字になっていないのか?
利益が赤字であったとしても、一時的な要因ではないのか?
純資産がプラスであったとしても、実質的には債務超過にはなっていないのか?
など、会社の実態にあわせて決算書を修正した上で、返済能力に問題があるかどうかを判定しています。

2-1.損益計算書の修正項目

まずは、損益計算書(売上・経費・利益の計算表)の修正項目についてみていきましょう。

利益が黒字になっていても、減価償却費が適正に計上されているかどうかを必ず確認します。

ほとんどの会社が、赤字になった場合、減価償却費を全く計上しないか、一部しか計上しないことで、最終利益を黒字にしようとします。

これについては、銀行は計算チェックをしていますので、減価償却費の計算を調整することで黒字決算にする行為は、利益の過大計上の行為として、銀行評価で悪くなるということに注意してください。

利益が赤字になっていても、それが例えば役員退職金や災害の損失など「一時的な要因によるもの」であったり、「返済能力には問題なし」と判断できる場合は、基本的に、銀行は問題なしと判断します。

2-2.貸借対照表の修正項目

次に、貸借対照表(資産・負債・純資産の状況表)修正項目についてみていきましょう。

決算書上、土地や株式などが簿価で計上されているが、現状の価格を適正に反映するのは時価であるため、土地や株式などを再評価した場合、資産が負債を上回ってしまい、実質債務超過と判定され、「返済能力に問題あり」と判断される場合もあります。

具体的に修正される項目を列挙すると、
●不渡りの受取手形、長期間の滞留債権、回収不能となった売掛金、販売できない在庫などのような不良債権、回収不能と見込まれる貸付金

●時価評価しなおした場合の含み損がある土地や株式

●計上しもれている未払分の税金や社会保険料
などがあります。

特に、修正事項として注意が必要な項目は次の3つです。

①売掛金
②受取手形
③貸付金

これらについて、返ってくる見込みのない売掛金、手形、貸付金は計上されていないか?きちんと損失として経費に計上したか?を銀行は、重点的に目を光らせています。

3.ポイント② 債務超過ではないか?

決算書を重視する銀行が融資審査の中で一番重視するのは、貸借対照表の中の「純資産の部」(右下部分)です。

純資産とは、資本金と事業活動から獲得した過去の利益の積み立て分の合計を表します。

簡単に言うと、自分のお金、誰かに返さなくていいお金ということです。

この項目が、プラスであることが、銀行評価の最低限のルールです。

債務超過というのは、純資産の部がマイナスになった場合のことをいいます。

債務超過になると、銀行の評価は厳しくなり、新規融資はできません。

3-1.決算書で債務超過ではない、は本当に大丈夫なのか?

決算書で債務超過ではないから大丈夫と安易に考えるのは危険です。

決算書では純資産がプラスでも、先ほど2の部分でお伝えしたように、銀行は、会社の実態に合わせて資産を再評価しなおす作業を行います。

決算書上の金額よりも、実際の資産の価値の金額が下回る場合で、結果として、純資産の部がマイナスになってしまった場合には、実質的には債務超過と判断されてしまいます。

決算書上では純資産がプラスでも、実質的に債務超過と判断された会社は、銀行の評価は厳しくなりますので注意しなければなりません。

4.ポイント③ 前期の決算が黒字なのか、赤字なのか?

4-1.銀行員はどの利益を重視するのか

会社が十分な利益を確保しているかどうかの判断にあたって、決算が各段階損益で黒字になっているかどうかでチェックします。

つまり、前期の決算書で税引き後当期純利益が黒字なのか、赤字なのかを確認します。

正常な会社であれば、黒字を維持しているのが通常です。

これが赤字だと、銀行評価上、あまりよくはありませんが、赤字であったとしても、特別損失などの一時的な要因である場合には、特段問題はありません。

一言に利益と言っても、損益計算書には、5つの利益があります。

5つの利益 意味
売上総利益 売上に直接対応する経費を差し引いた利益。一般的に粗利益と呼ばれる利益。
営業利益 会社の本業から生み出された利益
経常利益 会社の本当の実力を表す利益(営業利益から支払利息等を差し引いた利益)
税引き前当期純利益 経常利益から、固定資産の売却損益や特別利益、損失など臨時的に発生した損益までを考慮した利益
税引き後当期純利益 税引き前当期純利益から法人税等を差引いた最終的な利益

銀行が決算書の中で、注視しているのは、会社の本当の実力を表す「経常利益」です。

そうは言っても、もちろん、税引き後の当期純利益は、できるだけ赤字を計上しないように検討した方が無難です。

銀行との取引の上で、社長として最低限おさえておきたいポイントを上げるとすると次のようになります。
・経常利益を赤字にしない
・債務超過(純資産の部がマイナス)にならない
・実態に修正した結果、債務超過にならない

これだけは、絶対に頭の隅に入れておいてください。

4-2.やってはならない利益対策とは

先ほどもお伝えしましたが、たとえ経常利益で黒字が出ていたとしても、粉飾しての黒字になっていないのか?という点は、銀行は疑って決算書を見てきます。

銀行の融資を検討している会社であれば、常に、事業計画を策定し、決算前には利益予測や利益対策を検討しなければなりません。

決算ぎりぎりになって、今期が赤字になりそうだという場合に、ほとんどの会社が行う利益調整が、適正な減価償却費を計上せずに、黒字になるように調整して減価償却費を計上します。

これは、よくお目にかかる利益対策ですので、銀行は決算書で減価償却費が適正に計上されているのかを必ず確認し、もし不足がある場合には、適正な金額に計上しなおした利益をもとに決算書を確認していきます。

減価償却費の金額を調整するなんていう利益対策だけは、絶対にやらないでください。銀行からの心証が悪くなるだけです。

4-3.赤字でも銀行から借り入れができるのか?

赤字が一回でもあったら、銀行から借り入れができない、というのが経営者の常識なのではないでしょうか。

たしかに、赤字は対銀行との間ではあまり好ましくないものです。

ただこの場合に、赤字がどのような理由によるものか?が、とても大事になってきます。

例えば、創業時の赤字で当初の事業計画と大きく差異がなかったり、一時的な赤字ですぐに解消できたり、借入金の返済能力に特段影響がないような場合です。

もし、業績が悪化しているような場合には、そのことについて何らかの説得力のある理由を提示し、今後、会社の業績が上向きになる事業計画をきちんと説明できれば、必ずしも新規融資を受けられないというわけではありません。

とにかく、書面などで赤字の説明書類を作成し、今後の事業計画までも提示した上で、銀行に説明しなければなりません。

事前に赤字になりそうであれば、わかった段階で、銀行にその説明を決算前に行っておくべきです。

ただし、2期連続赤字となると、信用保証協会や日本政策金融公庫などでは、無担保・無保証の融資を受けることができないなど、新規の融資条件は非常に厳しいものになりますので、ご注意ください。

4-4.最低でもこれ以上の利益は確保してください

利益について、黒字であればいいというだけではありません。
会社が存続し、借入金の返済を行うためには、黒字であることに加えて、最低でもこれ以上の利益を確保しなければならないという金額があります。

それは、借入金の返済金額を上回るキャッシュフローを獲得しなければならないということです。

社長さんは、銀行に対して、借入金がきちんと返済できるキャッシュフローがあるかどうかを資金繰り表から提示しなければならないのです。

ここで、キャッシュフローとは、税金を引いた後の利益と減価償却費との合計金額です。

つまり、
借入金の返済金額 ≦ 税引き後当期利益+減価償却費
となります。

これを少し入れ替えると次のようになります。
税引き後当期利益 ≧ 借入金の返済金額-減価償却費

つまり、最低でも、借入金の返済金額から減価償却費を差し引いた金額だけは、税引き後利益で獲得しなければ、営業活動からの利益を原資として、借入金を返済できなくなります。

5.ポイント④ 売上と利益が右肩あがりか?

5-1.銀行が貸したくなる会社の5つの条件とは?

銀行はお金を貸すのが仕事ではありますが、それだけではありません。

銀行として、貸したくなる会社の条件というものがあります。

それは、流動性、成長性、収益性、安全性、公共性という5つの観点から、次のような特徴があります。

●流動性:現預金などの換金性の高い資産が多い会社か?
●成長性:売上が右肩上がりに成長している会社か?
●収益性:利益が右肩上がりに増加している会社か?
●安全性:複数の取引先と付き合いがあり、安定している会社か?
●公共性:日本や地域社会から、取引先から必要とされている会社か?

これらの中で、特に注視しているのが、売上と利益が右肩上がりに成長している会社か?という点です。

銀行の評価を高めるためにも、常に、売上と利益の両輪が、成長曲線を描けるように意識を向けることが大切です。

5-2.銀行融資のために、税理士の提案を断りましょう

売上が右肩あがりに成長している会社の社長が、必ず失敗するのが、税金対策です。利益が上がると、一番高いコストが税金というのもよくあります。

税理士さんとも決算対策という名のもとに、税金対策をしている社長は大変多くのではないでしょうか。

そんな社長さんに、私から、究極の銀行対策でもあり、倒産の回避手法を、伝授しましょう。

「今後、税理士さんからの提案を一切断ってください!」
これこそが、銀行対策で一番大事なポイントになるかもしれません。

というのも、税金対策のほとんどが、お金が出ていくものだからです。

よくあるのが、生命保険と役員退職金を利用した税金対策です。

これ、資金繰りという観点から見ると、最悪です。役員退職金は10年、20年先を見ながらの税金対策で、その間、お金が出ていってしまいます。

どんな社長でも、5年先はどうなるかなんて読めません。
それにもかかわらず、10年後、20年後の先までの節税効果まで見越して、お金を投入するなんて、愚の骨頂です。

生命保険の保険代を支払うために、頑張って経営をしている会社もよく見かけます。

銀行の評価を高め続けるために、経営者がすべきこと。それは、1円でも多くの利益を上げて、会社に1円でも多くのお金を会社に残すことです。

税金対策は、利益を下げるうえに、命よりも大事な現預金を流出してしまう行為に他ならないのです。

今日から、ぜひ、将来首を絞めるような無駄な税金対策はやめてください。

6.ポイント⑤ 流動負債に対する流動資産の割合は?

6-1.会社の短期的な安全性をはかる指標

流動負債に対して流動資産がどのくらいあるのか?によって、会社の短期的な安全性を見通すことができます。

流動資産とは、短期間で現金化できる資産のことをいいます。例えば、現預金、売掛金、在庫、有価証券などです。

流動負債とは、短期間で支払わなければならない負債のことをいいます。例えば、買掛金や未払金、1年以内に返済予定の借入金などです。

これは、流動比率といい、次の式で計算することができます。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100%

例えば、流動資産が5,000万円、流動負債が4,000万円の場合、
流動比率=5,000万円÷4,000万円×100=125%

6-2.銀行の評価を上げるための最低ライン

この比率は、一般的には100%あれば十分ですが、理想的には200%があるととても安全性が高い会社になります。

そうは言っても、200%の流動比率を超えているような会社はなかなかありません。

銀行の融資審査において、少なくとも120%、理想的には120~140%のラインを目指してください。

この比率を高めるためには、短期間で現金化できる資産を増加させるか、短期間で支払わなければならない負債を長期的に分割支払いにもっていくなどして減少させる必要があります。

7.ポイント⑥ 会社全体の資産に対する純資産の割合は?

7-1.会社の長期的な安全性をはかる指標

会社全体の資産にに対して純資産がどのくらいあるのか?によって、会社の長期的な安全性を見通すことができます。

純資産とは、資本金と過去から積み上げられた利益の合計金額のことです。

これは、自己資本比率といい、次の式で計算することができます。

自己資本比率(%)=純資産÷資産の合計金額×100%

例えば、純資産の部の金額が4,000万円、総資産の合計金額が20,000万円の場合、
自己資本比率=4,000万円÷20,000万円×100=20%

この自己資本比率が高いほど、長期的に会社の経営が安定し、つぶれない会社になります。

7-2.銀行の評価を上げるための最低ライン

では、どのくらいの自己資本比率であれば、倒産しにくい会社となるのでしょうか。

通常の会社であれば、20%でまずまずで、40%以上を超える会社は倒産しにくい会社になります。

銀行の融資審査において、少なくとも20%のラインを目指してください。

この比率を高めるためには、負債を資本金に振り替えたり、無用な税金対策ではなく1円でも利益を内部留保して純資産を増加させるか、在庫を削減したり、滞留している売掛債権を回収したり、使っていない固定資産を削減したりすることで総資産を減少させる必要があります。

長期的に経営が安定している会社というのには、共通点があります。

100年以上続く会社に共通するのですが、b>「純資産が、年間の売上金額を超えて」います。

ぜひ、年間の売上金額を超えるくらいの利益を内部留保してください。

8.ポイント⑦ 借入金を何年で返済できるのか?

8-1.借入金を何年で返済できるか、をはかる指標

借入金を営業活動から獲得したキャッシュフローで完済するまでに何年でかかるのか?によって、会社の借入金の返済能力を見通すことができます。

これは、債務償還年数といい、次の式で計算することができます。

債務償還年数(年)=(①有利子負債合計―②正常運転資金)÷③営業キャッシュフロー

①有利子負債合計=短期・長期借入金+割引手形-現預金
②正常運転資金=売掛金+受取手形+商品在庫-買掛金-支払手形
③営業キャッシュフロー=税引き後当期利益+減価償却費

例えば、有利子負債の金額が6,000万円、正常運転資金の金額が2,000万円、営業キャッシュフローが500万円の場合、
債務償還年数=(6,000万円-2,000万円)÷500万円=8年
となります。

この債務償還年数は、銀行が融資をする上で、最も重要視する指標です。

この年数が短いほど、資金繰りに余裕がある会社になります。

8-2.融資がOKかNGかを判断するための目安

もし、債務償還年数が10年であれば、営業活動からのキャッシュフローの10年間で債務を完済できるということになります。

銀行の返済期間は通常、5年~10年ですから、その範囲内にあれば問題はないですが、10年を超えてくると会社として黄色信号になります。

銀行の審査では、追加融資をする時に、金融検査マニュアルで定めている「債務償還年数」が10年未満かどうかという点を見ています。

最低でも10年未満の範囲内におさまるようにしてください。

各銀行が会社を評価する上でベースとしている金融検査マニュアルには、次のように規定しています。

債務償還年数が、
・10年未満の会社は問題なし。
・10年以上20年以下の会社は注意が必要。
・20年以上の会社は危険。

ただ、一部の会社、例えば、設備工場や不動産保有会社など、借入期間が長期になる業種については、30年以上かどうかで判断する場合もあります。

債務償還年数が10年以上の場合には、経営改善計画書などを提出することで、長期的な計画の中で、債務償還年数が10年未満になることを示す必要があります。

9.ポイント⑧ 借入金が月の売上と比べてどのくらいあるのか?

9-1.借入がどこまでできるのかをはかる指標

借入金が月の売上高と比べて何倍くらいあるのか?によって、会社の借入金の返済能力をはかることができます。

これは、借入金月商倍率といい、次の式で計算することができます。

借入金月商倍率(月)=(短期・長期借入金+割引手形)÷月売上高

例えば、短期・長期借入金と割引手形の金額が6,000万円、月売上高の金額が3,000万円の場合、
借入金月商倍率=6,000万円÷3,000万円=2月
となります。

この借入金月商倍率は、会社がどのくらい借入ができるのかを検討する上で、重要な指標です。

9-2.うちの会社は、どのくらいまで借入ができるのか?

会社がどのくらいまで借入ができるのかについて、業種・業態によって多少のばらつきがあります。

銀行の審査では、追加融資をする時に、金融検査マニュアルで定めている「借入金月商倍率」が3か月以下かどうかという点を見ています。

3か月以下の範囲内におさまるようにしてください。

各銀行が会社を評価する上でベースとしている金融検査マニュアルには、次のように規定しています。

借入金月商倍率が、
・3か月以内の会社は問題なし。
・5か月~6か月の会社は注意が必要。
・6か月以上の会社は危険。

つまり、6か月以上の借入金ともなると、なかなか現状の売上と利益では借入金が返せなくなります。

業種によって、借入金月商倍率は異なってきますが、設備投資があまり必要のない業種、例えば、サービス業や通信・運送業などでは、3か月を超えてくると危険信号となります。

銀行融資を受けるにあたって、この指標を常に意識して、生死の分岐点ラインを超えないようにしてください。

10.今すぐできる銀行融資の対策テクニック

ここまで、融資審査のポイントを8つに絞って説明してきました。

8つのポイントを意識したうえで、今すぐできるテクニックをご紹介していきましょう。

10-1.現預金をできるだけ多くする

銀行は手元資金に余裕があるかどうかを注視しています。

これは、手元資金に余裕がない会社と手元資金に余裕がある会社のどちらがつぶれる可能性があるかを考えてみれば、感覚的にわかるかと思います。

極端な例で考えると、100億円の現金がある会社(借入金が100億円)と1万円の現金しかない会社(借入金が0円)だとしたら、あなたはどちらの会社にお金を貸すでしょうか?

まさか、借入金がないからといって、1万円しか現金がない会社に貸したくないですよね。

たとえ借入金が100億円でも、100億円の現金がある会社の方が、銀行から評価される会社となります。

創業期以降で考えると、究極の財務戦略というのは、借入をしてでも、現預金をたくさんある会社を作ることです。

そうは言っても一朝一夕に現金を増やすことなんてできません。

今すぐにできる方法として、銀行は、月末の預金残高で判断していますので、できるだけ支払いなどは月初に回し、月末の預金残高を多くするようにしましょう。

また、一番大事なのが、決算書の現預金です。

これを大きくするために、何か簡単な方法はないでしょうか。

実は、すぐにできる方法が一つあります。

それは、決算期末を一番キャッシュが多い月に合わせればいいのです。

例えば、2月が一番キャッシュが多い会社であれば、決算を2月末に変更するのです。

これは、書類1枚で今すぐできる方法です。

10-2.社長借入金を固定負債に計上する

短期間で支払わなければならない負債を減少した方が、銀行の評価上、よくなります。

多くの会社では、社長からの借入金がある場合、短期借入金に計上されていることがよくあります。

しかし、短期借入金はできるだけ使わないでください。

社長からの借入金や長期設備支払手形などがある場合には、流動負債に計上するのではなく、固定負債へ振り替えるようにしてください。

金融検査マニュアルの上では、役員や株主からの借入金は資本金と同等にみなすように規定されているので、最悪でも、役員や株主からの借入金とわかるように、固定負債に表示しておくべきです。

10-3.社長借入金を資本金にふりかえる

ほとんどの会社では、決算書上、社長借入金が計上されています。

この社長借入金ですが、精算することがないようでしたら、資本金に振り替えた方が銀行の評価が上がります。

というのも、負債が減少して、純資産が増加するからです。

自己資本比率は大変重要な指標ですが、これをすぐに改善する手法としても有効です。

ただ、増資の手続きとなりますので、法務局への届け出が必要となります。

それに伴い、収入印紙などの登記費用もかかりますので、ご注意ください。

10-4.銀行から貸したくない会社になってしまう決算書項目

銀行が貸したくない会社になってしまう決算書というものがあります。

その代表的な項目が、社長への貸付金、関連会社への貸付金、仮払金です。

●社長への貸付金

社長への貸付金は、一般的に次の理由から発生します。

①会社から社長へ貸したお金、社長が個人的に使い込んだお金

②経費として使ったが、それを経費として計上してしまうと赤字になってしまうために、経費計上しなかった領収書の集まり

①の場合には、社長が会社を私物化している状態となってしまいます。

例えば、社長が個人的に株式を買うのに、お金が足りなかったから、会社からお金を借りたとか、個人的な支出を会社のお金から支払ってしまったというような場合です。

そんな会社にあなたならお金を貸したいでしょうか。

厳しいですよね。

②の場合には、いわゆる決算書の粉飾です。

適正に計算すると赤字になるため、本来は会社の経費であるものを削って利益を出そうとする行為です。

つまり、本来的には赤字の会社ということです。

●関連会社への貸付金

関連会社への貸付金は、一般的に、関連会社の資金繰りが厳しいことから、赤字補てんなどの目的で生じます。

そのような項目がある会社にあなたならお金を貸せるでしょうか。

「貸したお金が、関連会社へまた貸しされて、赤字の補てんでもされるのではないか」とこう考えるのではないでしょうか?

これも、お金を貸す側としては、厳しいですよね。

資金使途が変わるというのは、銀行融資において最悪の評価になりますので、ご注意ください。

●仮払金

仮払金は、一般的に、会社の経費精算をするにあたって現金と領収書との差額が生じることにより生じます。

そのほかに、通常の取引から生じないもので臨時に適用した仮の処理である場合もあります。

貸付金でも同様な処理の結果、生じる場合もあります。

このような理由による、仮払金や貸付金がある会社には、どんぶり勘定の可能性が多くあります。

例えば、決算ぎりぎりになって、決算書を組んでみたら、本来あるべき現金が200万円だったはずが、手元にある現金が1万円で、その差額199万円が出てしまったので、処理に困ってしまい、とりあえず仮払金に計上してみたというような感じです。

銀行は、このような科目がある会社のことを「経費の精算がきちんと行われていなくて、経理の管理に問題があるのではないか?」という見方をします。

こういう会社は資金繰りが厳しくなるところが多いです。

これらの項目がある場合、銀行の担当者は必ず、
「これは誰に対する貸付や仮払ですか?」
「これはどんな理由で生じたものですか?」
と質問してきます。

この時に、「たまたま生じただけ」という受け答えは危険ですので、注意してください。

きちんと、生じた理由と精算する計画を提示できるようにしておきましょう。

10-5.役員報酬を引き下げるときの留意点

会社の業績が思わしくなく赤字になりそうな場合に、利益対策として代表的なのが、役員報酬の引き下げです。

ただ、役員報酬を引き下げるときに、注意するべきことがあります。

それは、保証能力に影響しないかどうかです。

通常、借入において、社長が連帯保証人になっていますが、役員報酬を引き下げしすぎると保証能力が低下する場合があります。

場合によっては、新規の銀行融資にも影響する場合があるので注意してください。

11.長期的に銀行融資を利用するための展望

銀行が最重視する決算書について、短期的にできることもありますが、長期にわたって少しずつ改善していくことも検討していかなければなりません。

他にも、銀行対策という点で長期的に検討していかなければならない事項を含めて、最後にお伝えしていきましょう。

11-1.資産の部は上が大きく、下が小さい会社にする

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中長期的に、銀行融資を受け続けるためには、決算書の貸借対照表を改善していかなけばなりません。

決算書の改善のために、貸借対照表の資産の部を、「上が大きく、下が小さく」なるように心がけなければなりません。

つまり、固定資産をできるだけ縮小し、換金性の高い資産を大きくしていくことになります。

できれば、換金性の高い、現預金を増やしていく。

これが、銀行対策のためにも、会社の存続していくためにも、一番の方法です。

長期的な展望の中で、現預金をできるだけ増やしていくように意識してください。

11-2.税理士の提案は今すぐ断りましょう

現預金を増やすための方法は、1つだけしかありません。
それは、1円でも利益を獲得し、お金を残していくことです。

ズバリ、「税理士の提案は、今すぐ断りましょう」です。

税金対策でもお金が出ていかないものの場合は、やらなければなりません。

しかし、ほとんどの税金対策は、お金が出て行ってしまうものばかりです。

お金が出て行ってまで、税金対策をすることは、利益が減少するばかりか、お金まで減少し、銀行から見ると評価を落とすだけです。

ほとんどの社長は利益が出ると、税金対策ばかりに目が行きがちですし、税理士もそれに応えようとして税金対策を提案してきます。

銀行対策を考慮し、長期的に事業を存続していくことを目指すなら、ぜひ今日から、税金対策ではなく、1円でも利益を増やし、1円でもお金を残す経営を目指してください。

11-3.資料を定期的に提出する

銀行融資を長期的に利用していくためには、銀行に資料を定期的に提出していくことが有効です。

1年に1回、決算の時に、損益計算書や貸借対照表、勘定科目明細などの決算書類一式を提出するというだけでは、少なすぎます。

最低でも、半年に1回、できれば3か月に1回、資料を提出しなければいけません。

決算書だけではなく、会社の毎月の資金繰りの状況を表す資金繰り表を提出しましょう。

また、会社の損益の状況を示すのに、年一回では少なすぎで、3か月に1回、3か月ごとの損益状況を表す試算表を作成し、提出しましょう。

銀行は、会社の損益状況だけでなく、経理担当者の状況や損益管理等の管理体制にも重視しています。

毎月、試算表や資金繰り表を作成していないということは、損益管理や資金繰り管理が甘いという印象を与えてしまいます。

3か月ごとに資金繰り表や試算表を作成し、提出することで、会社の管理体制をアピールしましょう。

12.まとめ

銀行融資では、決算書を切り離すことはできません。
まず、今回取り上げた8つの項目をおさえた上で、現状を把握してみてください。

もし、現状に問題がある場合には、きちんと対策を検討してください。

ぜひ決算書を改善し、銀行からいつでも融資を受けることができる会社になりましょう。

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